塩を使わないと決めたとき、真っ先に困ったのが味噌汁と煮物でした。
塩そのものは、やめると決めればやめられます。振らなければいいだけです。ところが味噌と醤油は、それ自体が塩でできている。使わないという選択は、味噌汁と煮物を献立から丸ごと外すということでした。
外したくなかったので、探すことにしました。結局、一か月かかりました。
「無塩」で検索しても、出てこなかった
最初に打った言葉は「無塩 味噌」でした。当たり前だと思っていました。塩を使っていないものが欲しいのだから、無塩と打てばいい。
出てきたのは減塩ばかりでした。塩分二分の一、塩分三分の一。どれも塩は入っています。少ないだけです。
言葉を変えて何度も打ちました。それでも、並ぶのは減塩でした。そのうち、こう思うようになりました。無塩の味噌なんて、そもそも作れないのではないか。
実際、味噌は仕込みのときに塩を入れないと、雑菌が繁殖してしまいます。だから塩なしでは作れない。そう考えるのは、それほど無理のある想像ではありませんでした。
商品が無かったのではなく、言葉が違っていた
見つかったきっかけは、たしか「食塩不使用」という言葉だったと思います。
これで急に出てきました。無かったのではありません。売る側は「無塩」ではなく「食塩不使用」と書いていた。それだけの違いでした。
一か月かかった理由は、商品が存在しなかったからではなく、私が探していた言葉が売り場の言葉と違っていたからでした。
これから探す人がいるなら、渡せるものはこれくらいです。「無塩」で出てこなかったら、「食塩不使用」で打ち直してみてください。それで一か月が一日になるかもしれません。
味噌と醤油は、別の店の別の商品だった
もうひとつ手こずったのは、味噌と醤油が一緒に売っていなかったことです。
味噌は味噌で一つの店、醤油は醤油で別の店。作っているところも違いました。まとめて買えたら楽だったのですが、そういう売り方をしているところが見つからなかった。
結局、二つの店から別々に取り寄せることになりました。探すのに一か月、というのはこの二本ぶんの話です。
味噌は、まだよかった
届いた味噌は、思っていたよりずっと使えるものでした。
普通の味噌と同じかと言われれば違います。ただ、味噌汁にすれば味噌汁になりました。塩気がないぶん、香りと発酵の風味のほうが前に出てくる感じです。
使い方は、ほとんど味噌汁でした。これがあるかないかで、食卓の見た目がかなり変わります。ご飯と汁物があるだけで、食事らしくなる。
結果として、五年ほど使い続けました。厳格にやっていた期間とだいたい重なります。
醤油は、何かが足りない味だった
醤油のほうは、正直に書くと、うまくいきませんでした。
初めて口にしたときの感想は「これは何だろう」でした。まずいというのとも少し違う。醤油の形はしているのに、何かが足りない。そういう、それまで食べたことのない種類の味でした。
納豆に入れたり、煮物に使ったりしていました。使えないことはない。ただ、使うたびに何か足りないと思い続けていました。
三年ほどでやめました。味噌より二年早い。同じ一か月をかけて探した二本ですが、続いたのは片方だけでした。
探すのに苦労したからといって、そのぶん長く使えるわけではありませんでした。これは道具のときにも同じことがありました。
十一年後、また同じ間違いをした
この記事を書くにあたって、当時のものがまだ売っているのか調べてみました。
そして、また「無塩」で検索していました。出てきません。十一年前とまったく同じです。
「食塩不使用」に打ち直したら、すぐに出てきました。自分で書いた話を、自分で忘れていたわけです。
ただ、出てきたものは当時のものとは違いました。私が使っていた味噌は見つかりません。醤油のほうも、並んでいるのは別の商品です。
そして、味噌と醤油はいまも同じ店では売っていませんでした。紹介しているところはあるのですが、買うとなると、やはり別々になる。ここは十一年前と変わっていませんでした。
どれも私は使っていないので、味はわかりません。十年あれば、売っているものも、探し方も変わるということだけは確かでした。
塩を使わずに味をつける方法そのものについては、別の記事に書いています。味噌と醤油が無くても、台所は回りました。
なお、味噌と醤油が私の台所に戻ってきたのは、この五年が終わってからです。その話は別の記事にまとめました。
